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2014年6月4日水曜日

年金の給付水準・給付金額は?財政検証結果が発表

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厚生労働省が「公的年金の財政検証結果」を公表し、それを日本経済新聞が報じています。労働人口がこのままいくと(ゼロ成長シナリオ)、年金の給付水準はどんどん低下とのこと。防ぐためには女性と男性高齢者が働く必要がある(経済成長シナリオ)とのこと。
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報道はショッキングな見だしで、国民に危機感

『 年金、現役収入の5割割れも 厚労省が財政検証
    2014/6/3 16:07

 厚生労働省は3日、公的年金の財政検証結果を公表した。働く女性や高齢者の割合が大きく増えなければ、40年後の年金給付の水準は今より3~4割目減りし、現役世代の平均収入の5割を割り込む計算。働く人が増えるケースでは、50%以上を維持する。少子高齢化で年金制度が大きく揺らいでいる現状が浮き彫りになった。』
今のまま無策ですすむと、
  • 40年後の年金給付の水準は今より3~4割目減り
するのですね。

40年後って、60代にとっては自分がこの世からいなくなる時期だし、20代にとっては年金受給年齢目前だしで。世代別に受け取り方が違うんですよねえ。

こうやって危機感を国民に植え付けることで、労働人口を増やし、年金加入者を増やしたいのでしょう。

いわゆるガテン系女子の「ドボジョ」はそういう時代のもので。ひょっとするとマンガ出版社に対して政府から発注が言った企画なのかもしれませんね。

5年に一度と法律で決められている年金財政検証

『 年金の財政検証は5年に1回行い、将来の100年間にわたる年金財政の収支バランスをチェックする。いわば年金制度の健康診断だ。』
国民年金法には次のように書かれていますね。
『国民年金法(昭和34年法律第141号)-抄-
(財政の現況及び見通しの作成)
第四条の三 政府は、少なくとも五年ごとに、保険料及び国庫負担の額並びにこの法律による給付に要する費用の額その他の国民年金事業の財政に係る収支についてその現況及び財政均衡期間における見通し(以下「財政の現況及び見通し」という。)を作成しなければならない。
2 前項の財政均衡期間(第十六条の二第一項において「財政均衡期間」という。)は、財政の現況及び見通しが作成される年以降おおむね百年間とする。
3 政府は、第一項の規定により財政の現況及び見通しを作成したときは、遅滞なく、これを公表しなければならない。』
5年ごとに100年後の見通しを立てろというわけです。

話を報道に戻して。

現役世代の収入の50%の年金支給額を維持するルールは守れるのか

『 政府が2004年に実施した年金制度改革は、現役世代の収入(手取り)と比べた年金支給額の割合(所得代替率)を将来にわたって50%以上を維持するのが根幹だった。14年度の標準的な世帯の代替率は62.7%。試算では8つのケースを示し、このうち女性や高齢者の就労が大幅に進む5つのケースでは40年代半ば以降、代替率が50.6~51.0%を維持するとの結果だった。』
今は所得代替率は62.7%ですが、このまま行くと破綻するので、今後50%までさげてキープする計画なのですね(これはもう公約違反みたいなものなんですけどね)。

実際の「財政検証結果」から、所得代替率のケースについてみてみましょう。

所得代替率の見通し(財政検証結果)

http://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/nenkin/nenkin/zaisei-kensyo/dl/h26_kensyo.pdf

この8つのケースで、所得代替率はどうなるのかというと。
http://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/nenkin/nenkin/zaisei-kensyo/dl/h26_kensyo.pdf

真ん中辺りに「↑ 労働市場への参加が進むケース」と書いてありますね。そこより上側が、記事で説明している「女性や高齢者の就労が大幅に進む5つのケース」に当たります。ケースABCDEですね。

ではどれくらい女性の就労が期待されているのか。

経済再生シナリオ:女性の労働力率と就業率

http://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/nenkin/nenkin/zaisei-kensyo/dl/h26_kensyo.pdf
http://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/nenkin/nenkin/zaisei-kensyo/dl/h26_kensyo.pdf
太線が「経済再生シナリオ」です。太線ならば経済は再生されるというわけです。

ちなみに点線が現状維持ですね。

女性が労働人口にならなければ、この国は再生しないとこのグラフは言ってるのですね。よほど無理しなければ難しそうです。ってことはよほど女性を働かせるように社会を変えていくということですね。

では男性のグラフはどうなっているのか。高齢者に注目です。

経済再生シナリオ:男性高齢者の労働力率と就業率

http://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/nenkin/nenkin/zaisei-kensyo/dl/h26_kensyo.pdf
http://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/nenkin/nenkin/zaisei-kensyo/dl/h26_kensyo.pdf
注目は60代以上です。これだけ男性高齢者を働かせて初めて「経済再生シナリオ」というわけです。

これが「経済再生シナリオ」の正体です。

アベノミクス失敗の最悪シナリオ

『 ただ高齢者や女性の労働参加が進まない3つのケースでは、代替率は50%を割り込む計算。このうちアベノミクスが失敗してマイナス成長が続く最悪のシナリオでは、55年度には積立金が枯渇し、所得代替率は39%まで下がる。代替率は14年度に比べると4割近く目減りする計算になる。』
アベノミクス失敗なら大変なことになると危機感を煽ってるのですね。裏返せば、アベノミクスを成功させるためにやりたいようにやらせてねという恫喝に近いものがあります(笑)。リスク資産の運用比率の上昇とかね。

マクロ経済スライド実施でも破綻

『 プラス成長を保っても働く人が増えない場合は、代替率は50年度に45.7%と約3割目減りする。いずれのケースも少子化に合わせて給付を抑える「マクロ経済スライド」を15年度から実施しても所得の低迷で保険料収入が増えず、給付の原資が不足する。
さらっと大変なことが書いてありますね。
  • 少子化に合わせて給付を抑えるマクロ経済スライド
労働人口減少にあわせて、年金給付額を抑えますよということですね。

そんなマクロ経済スライドをやっても、労働人口と就業率が伸びない場合は、年金はより一層破綻に向かいますよと。

今後取り組みたい3つの改革

『 厚労省は、(1)保険料の納付期間を65歳まで延長(2)厚生年金に加入するパート労働者を拡大(3)マクロ経済スライドをデフレ下でも実施――の3つの改革に取り組んだときの特別試算もそれぞれ行った。いずれも、所得代替率の上昇に寄与する結果が出た。』
ここが超重要です。未来にやりたいことを説明しているのですね。

保険料納付期間を65歳まで延長する、つまり国民から予定の期間を延長して、カネ(保険料)を徴収することを改革と呼んでるわけです。そりゃそんだけ無理させれば所得代替率は上昇するでしょうよ。この国はルール違反を改革と呼ぶのですね。

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